2010年 01月 27日
QueryCruise vol.2 第1回 |
1月20日
RadlabにてパネルディスカッションSmall Talk,Big Talkに参加。これはプロジェクターを囲んで、目まぐるしく変わるスライドに対して参加者が議論を交していくというもの。スライドの内容は「建築家は不要」みたいな、ある種挑発的なモノだった。今までにない議論の場の設定だったし、新しいディスカッションのフォーマットとして利用できそう。
議論が、おそらく設定していた本人にも予想もつかない方向に向かっていくのは、アクロバティックで面白い。ただそういう場合のファシリテートは重要なのだろう(議題から逸れすぎると何の話か分からなくなるし)。また議題の内容設定も難しい。全体に同意を得るような内容では議論は誘発されないだろうし、抽象的なモノもそうなのかもしれない。それこそ、挑発的で具体的なモノがいいのだろう。
また開催されるのであれば、その時はもっと発言の瞬発力を身につけて参加したい。そのためにはもっと物事を多角的に捉えなくては。
1月24日、1月25日
QueryCruise vol.2
都市景観の「値段」とその評価基準について考える
講師は大庭哲治先生(京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 助教)。率直なレクチャー全体の感想は非常に分かりやすかった。先生のお話もとても丁寧で、一つ一つ確認されるような語り口調だったように思う。
1日目の内容は都市景観に値段を付ける意義とその方法論。都市景観形成・保全の正負の効果を定量的に表すために「値段」を付けて評価するとのこと。それはつまり我々が都市景観に対して多様な価値を見出す時(その価値は個人の主観的満足から生まれる)、その都市景観を享受するために支払ってもよいと考える費用に基づいて考えるという事であり、それは都市景観を経済的価値基準で考えるという事だった。
そしてその経済的価値は、経済学に基づく価値概念で利用価値と非利用価値に分類され、更にそれぞれ以下のように細分化される。

そしてこれらの価値の値段付けのため、3種類の手法を紹介してくださった。
・ヘドニック法→地価、家賃の価格が景観要素から影響を受ける度合いを計測し、その景観要素の価値を測定。
・仮想評価法(CVM)→市場取引されていない価値(例えば、景観への満足感など)をアンケートなどを用いて、支払意思額を尋ねる事によって、直接的に価値を定量化する。
・コンジョイント分析→景観構成要素と支払意思額を変化させ、その組み合わせによるプロファイルを複数作成し、その中から好ましいものを選択してもらう事で、市場取引されていない価値を評価。
ここで難しいのはCVMとコンジョイントの場合、質問事項や、プロファイルの作成の仕方によって、回答にある種のバイアスかかってしまうところだと思う。そのために様々な調査や分析が必要なのだろう。
またこういったアンケートの作成者が都市開発側であれば、回答内容を誘導してしまうような質問事項を作成してしまうのでないだろうか。そういう場合は第三者機関が介入するのだろうか。
この日は最後に値段付けの意義を再確認。その値段付けの意義とは、
・住民や関係主体の好みの強さの把握。
・景観政策に対する社会的合意形成のためのコミュニケーションツール。
・景観形成・保全の決定の合理性の検討。
といったような感じで1日目は終了だった。
2日目は、京都らしい都市景観形成に向けての評価方法とは?と題して値段付けの事例紹介や京都の都市景観の評価方法といった内容だった。
事例紹介の方は、①京町家保全の経済評価 ②京町家集積による近隣外部効果 ③近江八幡市の景観形成の経済的価値という3つの事例を紹介していただいた。前者2つは大庭先生の研究事例でもあり、①はCVM、②はヘドニック法を用いて、その経済的価値を測定している。③は実際に自治体が行った事例でコンジョイント分析を用いている。個人的に面白いのは、①と②の結果でかなりの差があるという事。異なる手法を用いて、異なるものの価値を計測しているのだから、当然といえば当然なのだが、①の結果では、(特定地区内の)京都市民の町家保全に対する支払意思額は総額約14億円/年だったのに対し、②の結果では、京町家集積による近隣外部効果(経済活動を通じず受けるメリット)は総額約655億円と評価されている。つまり京町家が近隣にあることで受ける恩恵は655億円なのに対し、京都市民はその町家を保全することに14億円/年の価値しか見出していないのかな、と思ってしまった。
次に都市景観の評価方法に関して、京都の場合は京都市新景観政策というものがあり、その政策の効果を評価するシステムとして、京都市景観検証システムというものを検討しているのだそう。そのシステムの中に京都市景観白書(仮)なるものが存在していて、これを市民とのコネクタとして意見集約に繋げ、そして政策進化という流れをシステム化し運用しようとするものとの事。ただディスカッション時に、あまりこういった畏まったものは市民の目には留まらないのではないか、という意見が出たのだけど、その参照になるような英国の事例としてCABEという団体のレポートを紹介してくださった。
そして大庭先生は最後に、都市景観の価値は、時とともに変わってゆくもの。その時点できちんとその価値を評価して、その蓄積で市民の意識、都市環境はどのように変わっているかを把握しておかなくてはならない。と言っておられたのが、個人的には印象的だった。
以上をもってこの2日間に亘るQueryCruise vol.2 都市景観の「値段」とその評価基準について考える は終了。景観に値段付けするという、あまり考え付かない評価方法も、その意義から手法まで、丁寧に説明してくださり、概略程度ではあるかもしれないが、その輪郭を把握することが出来たと思う。ここから如何にして自分の建築作品や思想にフィードバックさせるかが大事。2日間、非常に丁寧なレクチャーをしてくださった大庭先生には心からお礼を言いたい。
M.Atsushi
RadlabにてパネルディスカッションSmall Talk,Big Talkに参加。これはプロジェクターを囲んで、目まぐるしく変わるスライドに対して参加者が議論を交していくというもの。スライドの内容は「建築家は不要」みたいな、ある種挑発的なモノだった。今までにない議論の場の設定だったし、新しいディスカッションのフォーマットとして利用できそう。
議論が、おそらく設定していた本人にも予想もつかない方向に向かっていくのは、アクロバティックで面白い。ただそういう場合のファシリテートは重要なのだろう(議題から逸れすぎると何の話か分からなくなるし)。また議題の内容設定も難しい。全体に同意を得るような内容では議論は誘発されないだろうし、抽象的なモノもそうなのかもしれない。それこそ、挑発的で具体的なモノがいいのだろう。
また開催されるのであれば、その時はもっと発言の瞬発力を身につけて参加したい。そのためにはもっと物事を多角的に捉えなくては。
1月24日、1月25日
QueryCruise vol.2
都市景観の「値段」とその評価基準について考える
講師は大庭哲治先生(京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻 助教)。率直なレクチャー全体の感想は非常に分かりやすかった。先生のお話もとても丁寧で、一つ一つ確認されるような語り口調だったように思う。
1日目の内容は都市景観に値段を付ける意義とその方法論。都市景観形成・保全の正負の効果を定量的に表すために「値段」を付けて評価するとのこと。それはつまり我々が都市景観に対して多様な価値を見出す時(その価値は個人の主観的満足から生まれる)、その都市景観を享受するために支払ってもよいと考える費用に基づいて考えるという事であり、それは都市景観を経済的価値基準で考えるという事だった。
そしてその経済的価値は、経済学に基づく価値概念で利用価値と非利用価値に分類され、更にそれぞれ以下のように細分化される。

そしてこれらの価値の値段付けのため、3種類の手法を紹介してくださった。
・ヘドニック法→地価、家賃の価格が景観要素から影響を受ける度合いを計測し、その景観要素の価値を測定。
・仮想評価法(CVM)→市場取引されていない価値(例えば、景観への満足感など)をアンケートなどを用いて、支払意思額を尋ねる事によって、直接的に価値を定量化する。
・コンジョイント分析→景観構成要素と支払意思額を変化させ、その組み合わせによるプロファイルを複数作成し、その中から好ましいものを選択してもらう事で、市場取引されていない価値を評価。
ここで難しいのはCVMとコンジョイントの場合、質問事項や、プロファイルの作成の仕方によって、回答にある種のバイアスかかってしまうところだと思う。そのために様々な調査や分析が必要なのだろう。
またこういったアンケートの作成者が都市開発側であれば、回答内容を誘導してしまうような質問事項を作成してしまうのでないだろうか。そういう場合は第三者機関が介入するのだろうか。
この日は最後に値段付けの意義を再確認。その値段付けの意義とは、
・住民や関係主体の好みの強さの把握。
・景観政策に対する社会的合意形成のためのコミュニケーションツール。
・景観形成・保全の決定の合理性の検討。
といったような感じで1日目は終了だった。
2日目は、京都らしい都市景観形成に向けての評価方法とは?と題して値段付けの事例紹介や京都の都市景観の評価方法といった内容だった。
事例紹介の方は、①京町家保全の経済評価 ②京町家集積による近隣外部効果 ③近江八幡市の景観形成の経済的価値という3つの事例を紹介していただいた。前者2つは大庭先生の研究事例でもあり、①はCVM、②はヘドニック法を用いて、その経済的価値を測定している。③は実際に自治体が行った事例でコンジョイント分析を用いている。個人的に面白いのは、①と②の結果でかなりの差があるという事。異なる手法を用いて、異なるものの価値を計測しているのだから、当然といえば当然なのだが、①の結果では、(特定地区内の)京都市民の町家保全に対する支払意思額は総額約14億円/年だったのに対し、②の結果では、京町家集積による近隣外部効果(経済活動を通じず受けるメリット)は総額約655億円と評価されている。つまり京町家が近隣にあることで受ける恩恵は655億円なのに対し、京都市民はその町家を保全することに14億円/年の価値しか見出していないのかな、と思ってしまった。
次に都市景観の評価方法に関して、京都の場合は京都市新景観政策というものがあり、その政策の効果を評価するシステムとして、京都市景観検証システムというものを検討しているのだそう。そのシステムの中に京都市景観白書(仮)なるものが存在していて、これを市民とのコネクタとして意見集約に繋げ、そして政策進化という流れをシステム化し運用しようとするものとの事。ただディスカッション時に、あまりこういった畏まったものは市民の目には留まらないのではないか、という意見が出たのだけど、その参照になるような英国の事例としてCABEという団体のレポートを紹介してくださった。
そして大庭先生は最後に、都市景観の価値は、時とともに変わってゆくもの。その時点できちんとその価値を評価して、その蓄積で市民の意識、都市環境はどのように変わっているかを把握しておかなくてはならない。と言っておられたのが、個人的には印象的だった。
以上をもってこの2日間に亘るQueryCruise vol.2 都市景観の「値段」とその評価基準について考える は終了。景観に値段付けするという、あまり考え付かない評価方法も、その意義から手法まで、丁寧に説明してくださり、概略程度ではあるかもしれないが、その輪郭を把握することが出来たと思う。ここから如何にして自分の建築作品や思想にフィードバックさせるかが大事。2日間、非常に丁寧なレクチャーをしてくださった大庭先生には心からお礼を言いたい。
M.Atsushi

